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貧血の話

はじめに

みなさんこんにちは。血液の病気として真っ先に思い浮かぶのは貧血ではないでしょうか?<br>言葉としては馴染みの深い「貧血」ですが、貧血について知らないことが多いという方や、健康診断などで貧血を指摘されて気になっている方もいらっしゃると思います。このコラムでは、貧血の中でも最も一般的な鉄欠乏性貧血についてご説明したいと思います。

貧血とは

 血液の中には生命を維持するのに必要な3種類の血液細胞が存在します(図1)。これらの血液細胞には大切な仕事があるわけですが、今回着目するのは赤血球です。赤血球の仕事は、呼吸で肺に取り込んだ大気中の酸素を受け取って、体の隅々の細胞まで届けることです。<br> 貧血とは、酸素の運搬役である赤血球が不足して、<b>体全体が酸素不足に陥ってしまう病気</b>なのです(図2)。貧血になると体全体が酸欠になるため、だるい、疲れやすい、頭がいたい、少し動いただけで動悸がする、息切れがするなどの症状が出ます。これが貧血の基本的な症状です(図3)。

貧血の原因とは?

 貧血の診断は血液検査でヘモグロビンの量を測ることでなされます。図4で示した基準よりヘモグロビン値が低い場合に貧血と診断されるのです。<br> では、なぜ赤血球が不足して貧血になってしまうのでしょうか?実は、血液細胞は使い捨ての消耗品なんです。たとえば赤血球の寿命は約120日です。役目を終えた赤血球が毎日200億個ずつ壊れて行くので、僕らは毎日同じだけの赤血球を新しく作って補充している訳なんですね(図4)。<br> 赤血球を始めとする血液細胞は、骨の髄、すなわち骨髄で、造血幹細胞という血液の種になる細胞から作られています。骨髄は血液を作る工場というわけです(図5)。

鉄欠乏性貧血について

 赤血球は鉄とタンパク質を材料として造られますが、このときにビタミンB12や葉酸、エリスロポエチンといったビタミンやホルモンが必要になります。鉄は酸素を赤血球につなぐクリップの役目をします(図6)。これらのうちどれが欠けていても貧血が起こりますが、今回は一番頻度の多い鉄欠乏性貧血について見ていきましょう。<br> 鉄欠乏性貧血の原因を図7に示します。このように食事から鉄分を取れていない、あるいは鉄分をちゃんと取っているのに、それ以上に出血で鉄分を失っている事が原因となります。 出血の主な原因としては、女性の場合は子宮筋腫などの婦人科疾患による過多月経が多く、男性の場合には大腸癌など胃腸の病気などが隠れていることがあります。 <br> 鉄欠乏性貧血の治療はバランスの良い食事と、必要に応じた鉄剤の内服。そして何より原因となっている疾患の治療が大切です。<br>

貧血の話 まとめ

 今日は鉄欠乏性貧血についてお話ししましたが、たくさんある貧血のなかのごくごく一部に過ぎません。貧血は一つの病気というよりも、一つの症状と考えてもらった方がいいと思います。その原因は山ほどあって、さほど心配のないものから、命に関わるものまであります。<br> <b>貧血の陰に隠れた怖い病気がないかを確認することが重要です。</b>貧血で病院に来たのに、なんで婦人科に紹介されるの?なんで胃カメラをしなきゃいけないの?なーんて思うかたもいらっしゃったかと思いますが、今日の話をお聴きになった皆さんはなぜ、そういう検査が必要なのかが理解できたことと思います。<br>もし、健康診断などで貧血を指摘されたら、重大な病気の発見の糸口になるかもしれません。できるだけ早く、近くのかかりつけ医に相談しましょう。<br>

 北福島医療センター血液内科 甲斐 龍幸

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